ホスホエノールピルビン酸(PEP)によるTh17依存性自己免疫疾患の治療法 (No. 0224)

 
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概要

自己免疫疾患は、世界人口の4%近くが罹患していると言われている病気です。多発性硬化症や乾癬などの自己免疫疾患において重要な役割を担っているものに、Tヘルパー17(Th17)細胞があります。Th17関連サイトカインや転写因子は、自己免疫反応を抑えるための治療ターゲットとして魅力的ですが、治療は往々にして有用な腸管Th17細胞をも攻撃し、腸の恒常性と生体防御機能を損なうことがあります。石川裕規教授率いるOISTの研究チームは、ホスホエノールピルビン酸(PEP)がJunB依存性Th17細胞の生成を阻害することを発見し、Th17依存性自己免疫反応を抑制するための新しく適用の広い治療法を開発しました。JunBは自己免疫性Th17細胞の産生には必要ですが、腸管Th17細胞の産生には必要ないため、PEPは腸での副作用を誘発せずに自己免疫性Th17細胞を選択的に標的することができるのです。

 

准教授
石川 裕規

免疫シグナルユニット

応用

  • 創薬
  • 自己免疫疾患(多発性硬化症ほか)

 

利点

  • 腸管Th17細胞に影響を与えることなく、自己免疫性Th17細胞を選択的に標的化

   

ホスホエノールピルビン酸(PEP)が自己免疫性Th17細胞の産生を阻害

   

マウスへのPEPの投与により、Th17依存性の自己免疫性脳脊髄炎が有意に改善

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技術のポイント

研究グループは好気性解糖系の中間代謝物であるPEPが、Th17分化における負の制御因子であることを突き止めました。マウスにPEPを投与すると、IL-17AなどのTh17の指標分子の発現が抑制され、Th17依存性自己免疫性脳脊髄炎が改善されることが分かりました。PEPは、病原性Th17の分化に重要な役割を果たすAP-1転写因子JunBに結合し、IL17a遺伝子座におけるJunB/BATF/IRF4複合体のDNA結合を阻害することが明らかになりました。PEPはJunBタンパク質に作用し、好気性解糖とTh17分化の相互制御を仲介することにより、自己免疫細胞を選択的に標的にします。

 

メディア掲載・プレゼンテーション

 

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