一般公開セミナー: 免疫システムに学ぶ — HLAを中心に据えて — *日本語のみ Only in Japanese

Date

2017年11月9日 (木) 15:00 16:00

Location

セミナールームC209, センター棟

Description

演者

笹月健彦 (九州大学高等研究院 特別主幹教授)

演題

免疫システムに学ぶ — HLAを中心に据えて —

要旨

HLAは、ウイルス、細菌、寄生虫などの病原体由来の抗原ペプチドと結合して、抗体やキラーT細胞を誘導し、感染防御の中枢をなす分子群です。これを支配するHLA遺伝子は、ヒトゲノムの中で、最も個人差(多型性)に富む遺伝子で、全部で1万種類の対立遺伝子が存在します。そのためどのような病原体由来の抗原ペプチドとも、誰かのHLAが結合して免疫応答出来るよう、このような膨大な個人差(多型性)が進化したと考えられています。

一方、抗体とT細胞レセプターを支配する遺伝子には、一人ひとりのレベルで1015に達する膨大な「多様性」があります。すなわち、どのような病原体に対しても、それを認識して排除する抗体やキラーT細胞が準備されています。

また、免疫システムは、自己と非自己を認識し、自己に対しては免疫応答を起こさない仕組みになっています。免疫システムが認識する「自己」とは一体何なのか、「非自己」とは何なのか、何がそれを認識出来るのか。哲学的にいう「我」とは何か、「他」とは何か、そして「それを認識するシステム」は何かを考える時、少なくとも免疫システムでは、「自己」、「非自己」、「それを認識するシステム」を定義し、物質として提示することが出来ます。しかしながら、私達が脳を使って考える「自己」、「非自己」、そして「それを認識するシステム」は当然、免疫システムの場合とは全く別物となります。免疫システムでは「自己」がなければ「それを認識するシステム」も出来上がりません。すなわち「非自己」の認識もありません。

免疫システムには「自己」、「非自己」と「その認識」を教育する中枢(Head quarter)といもいうべき「胸腺」があります。胸腺で「自己」を認識出来ないT細胞は排除されます。逆に「自己」を非常に強く認識するT細胞もまた排除されます。すなわち胸腺で教育を受けて、全身を巡っているT細胞は全て自己を認識し、しかしその認識が強すぎないということで選別されたものから出来上がっていることになります。

このように免疫システムを眺めてくると、一体、我々の活動を含めて、何がどこまで遺伝子で決められているのだろうか、どこまで遺伝子から自由でありうるのかという想いに駆られます。

ここでは「多型性」と「多様性」に富む免疫システムを概観し、そこから学びとれることについて一緒に考えたいと思います。

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