ユニット紹介
生物は環境からの情報を感知し適切に応答することで生命を維持している。この感知して応答するシステムの破綻は、ヒトでは多くの場合病気の原因となっている。十分量の食事をとっていても満腹中枢を支配するホルモン作用に異常があると、肥満に伴う様々な疾患を引き起こす。また細胞増殖シグナルや細胞死シグナルを伝達する仕組みの破綻は癌の原因となる。私共のユニットでは、細胞外からの情報に応答する細胞内シグナル伝達の仕組みや遺伝子発現制御の機構に興味を持っている。遺伝子発現制御は大きく分けて転写レベルと翻訳レベルでなされているが、私共は、翻訳制御の重要な一面であるmRNA分解系の制御に注目している。特に増殖シグナル伝達系を解析する中で見いだしたTob蛋白質や、それと相互作用するmRNA分解系酵素複合体を構成する蛋白質の作用機構に焦点をあて、蛋白質の構造解析から遺伝子欠損マウスの病態解析までを、様々な分子生物学的、細胞生物学的手法を用いて行っている。このような解析を通して、外来シグナルがmRNA分解を誘導する基本的な機構のモデルを提唱し、またそのモデルに立脚した創薬への応用を提案する。