Issue 1 2023年1月 インクルーシブ・リーダーシップ
今月のトピック:インクルーシブ・リーダーシップ
インクルーシブ・リーダーシップの目的は、安全性と信頼を意図的に育む環境の中で、一人ひとりの能力と貢献が認められ評価される、人間中心の組織文化を発展させることです。インクルーシブ・リーダーシップは、階層的な地位よりもむしろ行動によって特徴付けられます。具体的には、チームやメンバーの適応能力や協働する意思、強いコミュニティ意識や帰属意識を高め、意味のある結果と永続的な変化をもたらす条件や風土を生み出します。インクルーシブ・リーダーシップは、個人レベルの独自性を尊重することで、個人やチームがその潜在能力を最大限に発揮できるようにし、組織の重要な財産である『多様性』に力を与えます。この非常に重要なリーダーの資質は、差別化、同化、あるいは完全な排除に焦点を当てた利己的なリーダーシップとはまさに対照的です。このように影響力のあるリーダーシップは、必ずしも公式な指導的立場にある人だけではなく、組織内の誰もが発揮できる可能性があります。コミュニティと帰属意識を育む方法についてもっと知りたい方は、OISTで2月1日、2日に開催されるC-Hubのインクルーシブ・リーダーシップ・シンポジウム20231にご参加ください。多様なインクルーシブ・リーダーシップ実践の当時者たちによる講演、パネルディスカッション、ポスター発表がご覧になれます。
科学的根拠
教育、経営、組織行動において、インクルーシブ・リーダーシップの成功事例等に関する研究が活発に行われています。インクルーシブ・リーダーの行動は、研究文献より抜粋した以下グラフに要約されています。
4つの中核行動(独自性の育成、帰属意識の強化、感謝の表明、組織的努力の支援)は、リーダーによる意思決定をする機会の共有や、多様な貢献の奨励と共に、普段から上司と部下の間で気軽な交流や対話が可能であり、上司がいつでも対話に対してオープンであることを明示的に発信するリーダーシップによってさらに強化されます。大学や組織は、インクルーシブ・リーダーシップの集団的性質から恩恵を受け、組織のメンバーの心理的安全性やエンパワーメントの向上から、帰属アイデンティティを高めることができます。個人は、境界を越えて他者と創造的かつ革新的なコラボレーションを行うことで、潜在能力を最大限に発揮し、課題に対応する能力を高め、困難をしなやかに乗り越え回復する力を発達させることができます。
今日からできる実践方法
組織内での立場に関係なく、誰でもインクルーシブ・リーダーシップの実践を自ら示し、人材育成に関わることで、さまざまなレベルで組織において影響を与えることができます。ここでは、インクルーシブ・リーダーシップに向けて一歩を踏み出すための5つの方法をご紹介します:
* 伝統的に特権的な地位を占めてきた人々や、多数派の一員であることから利益を得てきた人々が、支配的な文化の(多様性に配慮しない)「当たり前」を永続させないように、自ら気づいて疑問視することに責任感をもつ
* 同僚が自分の経験や専門知識、視点を提供できるような、議論や交流を促進する場を作る
* 個人の個性やグループのアイデンティティを、OISTで皆が共有する組織アイデンティティと関連づけるために、価値観の肯定や偏見の軽減を積極的に行い、協働する。
* 矮小化されている声を擁護し、代表されていない/見えない存在であった人々の負担を軽減する。
* サーバント・リーダーシップ(大学や組織で共有される集団的な目標に奉仕するリーダーシップのこと)の文脈において、自分の役割としてどのような行動をとることができるかを考える。
参考文献・資料:
Ernst, C. & Yip, J. (2009) Boundary spanning leadership: Tactics for bridging social boundaries in organization. In T. Pittinsky (Ed.) Crossing the divide: Intergroup leadership in a world of difference. Boston, MA: Harvard Business School Press.
Korkmaz, A. V., van Engen, M. L., Knappert, L., & Schalk, R. (2022). About and beyond leading uniqueness and belongingness: A systematic review of inclusive leadership research. Human Resource Management Review, 32(4).
Kugelmass, J. W. (2003). Inclusive leadership: Leadership for inclusion. National College for School Leadership.