2. 他大学URA室との違い

外部研究資金セクションマネジャー 杉原 忠氏インタビュー

杉原 忠氏プロフィール▼

杉原忠
Tadashi Sugihara

杉原忠マネジャー

東北大学理学部物理第二学科卒業
九州工業大学大学院情報科学専攻 博士(情報工学)
理化学研究所脳科学総合研究センター、米国ジョンズ・ホプキンス大学、ロチェスター大学などでシステム神経科学、認知脳科学研究に従事
2012年より京都大学学術研究支援室URA
2014年よりシニアURA、副室長
2017年よりOIST外部研究資金セクションマネジャー
2020年アジア初のNCURA Chair of Region VIII (International Region)
NCURA MagazineではAsia Pacific RegionのContributing Editorを務めた(2015-2018)
RA協議会代議員・運営委員(2015-2020)

KURAとGRANTSの違い

- 京都大学学術研究支援室(KURA)の副室長を経て、2017年にOISTにいらしたと聞いています。どういう点に違いを感じますか?
GRANTSのスタッフの方が断然おとなしいですね。おとなしい=従順というわけではありません。KURAは私が所属していたときでも30人近くいたように思います。こっちは正職員数6人で業務にあたっています。30人のKURAはジャングル的なところもありましたが面白かったですよ。

上空から見たOIST

- ではGRANTSの方が苦労は少ないということでしょうか?
いえ、30人のオフィスに存在する苦労は6人のオフィスにもあることを体験中です(笑)。つまり、人が働いている以上、人由来の問題というのは必ず生じますね。マネジャーとして、オフィスをどちらに進めていくか考えて運営しますから、個人面談の時、スタッフに苦言を呈する役割も避けられません。着任時に研究担当ディーンたちからそういうところも期待されましたから。

- そうすると普段のオフィスはピリピリとした雰囲気なんですか?
そうかもしれませんね。特に私の座席に近い空間は。スタッフを気の毒に思います。でも、結構、仕事と関係ない話も平気でしているように思いますから、あまり私の存在を気にしていないというのが本音なんじゃないでしょうか?存在感薄いんですよ(笑)。

学内の様子

- えー、最初「おとなしい」とおっしゃいましたが、もう少し具体的にお話しいただけますか?
これはKURAとGRANTSとで誕生の経緯が違うからだと思います。KURAは第三の職種として、教員でも職員でもないという立ち位置で誕生しました。ですから、どちらにもないはっきりした「色」が必要だったと思います。KURAは発足時、室長を含めシニア3名、若手5名、専任の事務員が3名でした。私は若手ではありませんでしたがその5名のひとりです。本当の若手からは「ミドル」と呼ばれていました。GRANTSは最初から事務室です。他の大学で「研究推進課」と呼ばれているようなオフィスです。つまり事務処理ができなくては話にならない組織です。だからKURAで求められた、「意外性」とか「創造性」というものはあまり比重が高くないし、そういうものを取り入れようという雰囲気は醸成されなかったのでしょう。

- だから、おとなしいと?
そういうことです。私に与えられたミッションは、最低限の事務処理をする組織から、より機能的に、効率的に、先を読んだ行動を取れる組織にすることでした。外部からの運営資金獲得はOISTにとっては、極めて重要なことなので、このようなオフィスにすることを期待されたのだと思います。スタッフはこれまでにも十分大学に貢献しているという自負があったでしょうから、このミッションを実現するために私が行ったことは、心地よい環境を乱すようなものと受け止められたかもしれません。ただ、それをするために私が選ばれた以上、嫌われても実行するしかないですね。

学内の様子

URA機能としてのGRANTSの国内での位置づけ

- KURAとの比較は説明していただきましたが、日本国内を視野に入れるとGRANTSはどのような組織だと言えますか?
やはり、特徴はURA室としてではなく事務組織として設置されたため、他の学内事務組織に馴染んでいるということが挙げられます。さらにpre-とpost-awardの両方をしている点もユニークですね。つまり、本当の意味で競争的研究費のライフサイクルに関わっています。これはとても研究者や研究室との絆を深めるために重要だと思います。なぜなら、研究者が次の競争的研究費を必要とするタイミングが見えやすいからです。この点については、セクション内でさらに重要性の理解を深めなくてはなりません。

- その他には?
もちろん、日英対応です。ただ、日本のURAの成り立ちからすれば、博士号取得者の多くは何らかの形で英語を使う機会に触れてきたはずで、どのURAも外国人の対応に英語は使えるでしょう。案外、求人案内の応募資格には業務遂行に必要な英語レベルを求めているものが多いですしね。

卒業式で帽子を投げる学生たち

- すると、どのあたりがセクションの強みになりますか?
現場でどれくらい多く英語対応しているかを比較すると、おそらくうちのセクションの方が、はるかに機会が多いでしょう。結果として、英語対応の質も高くなると思います― 個人ではなくセクションとしては。つまり、どのスタッフでも、急に外国人研究者がオフィスに質問に来たとしても、きちんと対応できるというレベルの高さはあると思います。また、学内周知のためには公募情報だけでなく、例えば、科研費の使い方についての資料やセミナーもスタッフは英語で提供しています。

- レベルが高い理由は何でしょう?
公募の際、必要な資格としてビジネスレベルの英語力を記載していますから、少なくともなんとか英語でやっていけるだろうという自信のある方が最初から集まっているのかもしれません。もっともこの記載のせいで、敬遠される可能性もあります。他には、学内で英会話コースがレベルごとに実施されており、誰でも参加できますから、学習を通じてスキルアップできる環境にあります。もっとも、なんといっても外国人研究者の数がOISTは多いですから、場数を踏むことでレベルは上がるでしょう。

スクリーンに映ったオンライン参加者と会議

- 会話だけでなく、書く方も英語力は必要ですか?
そうですね。学内向けの配布資料は日本語版と英語版を作成しますし、執行部への報告資料は英語になります。

- きっちりした英語を書くのは大変そうですね。
大丈夫です。学内には英語の編集サービスもあります!もちろん分量によりますが、4営業日程度で添削された英語原稿が返ってきます。

- そのあたり、日本人スタッフに対するサポート体制が充実しているのですね。
そう思います。「英語を使うから面倒だ」と捉えるのでなく、業務をしながら英語力が上がっていく、そんなありがたい職場だと考えてもらいたいですね(笑)。