2021年12月
OISTのサイエンス・コミュニティを通じて、STEM(科学、技術、工学、数学)分野で活躍する女性を支援し、能力を高めるための取組みの一環として、OIST財団と協力して設立したリタ・R・コルウェル・インパクト基金が2021年11月に最初の助成を行いました。助成金受領者の発表および、プロジェクトリーダーとコルウェル基金委員会からのメッセージを紹介します。リタ・R・コルウェル・インパクト基金の全ては、慈善寄付によって賄われています。この基金にご寄付いただいた寛大な寄付者の方々に感謝いたします。
リタ・R・コルウェル インパクト基金支援プロジェクト
助成期間 2021年12月~2022年11月
1. アフガニスタンの女子学生を対象とした研究インターンシップ(担当:シーレ・ニコーマック教授)
このプロジェクトは、アフガニスタンの女子学生をOISTに招き、6ヶ月間の研究インターンシップの機会を提供することを目的としています。インターンシップ終了時には、OISTの教員が彼女たちをOISTの博士号取得者として推薦することを検討したり、OIST外での博士号取得や就職先を探す支援を行います。アフガニスタンの学生との交流は、イタリアのトリエステにある国際理論物理学センターの協力を得て行われました。現在カブールではほとんどの国との外交関係が遮断されているため、学生たちはイランかパキスタンに滞在しています。
プロジェクトリーダーとコルウェル基金委員会からのメッセージ:
最近のアフガニスタンの状況で深刻な影響を受けている女性たちにとって、教育へのアクセスは非常に重要な問題です。コルウェル基金は、教育を受ける権利を求めて努力するアフガニスタンの理系女子学生を支援することで、この差別を翻すことに尽力します。OISTでの研究インターンシップが、彼女たちの教育の機会と学力をさらに高めるだけでなく、将来、研究者、教育者、そしてリーダーになるためのサポートになることを願っています。私たちのこの行動は、アフガニスタンの人々が直面している問題の規模からすれば非常に小さなものですが、当事者たちにとって本当の意味での変化となること、またこのような取り組みが多く行われ、アフガニスタンのため、女性のため、そして科学のために貢献できることを期待しています。
2. 数学と理論物理学の接点に立つ女性たちin沖縄(担当:鳥海玲子准教授、シャオダン・ジョウ准教授)
本プロジェクトは、2022年9月にOISTで開催予定の科学ワークショップにおいて、日本の女性数学者のポートレートを追加し、カタログ冊子『Women of Mathematics Around the World』とその展示を拡大することを目的としています。このワークショップは、ここ数年ヨーロッパや北米の様々な研究機関で開催されてきた「数学と理論物理学の接点に立つ女性たち」シリーズの一環です。このカタログ冊子と巡回展では、女性数学者について写真とインタビューで紹介していますが、彼女たちが経験してきた職業上の道のりは、女性として、母として、妻として、パートナーとして、娘としてなど、人生におけるプライベートな側面と切り離すことはできません。
プロジェクトリーダーとコルウェル基金委員会からのメッセージ:
今回の沖縄でのワークショップとカタログ冊子プロジェクトは、数学と物理学の間に新しい橋を架けることにより、既存の橋を強化する目的があります。対象となるのは、日本や海外に在住する様々な分野の女性数学者や物理学者です。このイベントは従来的に男性優位な分野で活躍する女性たち、特に女性が非常に少数となっている日本を拠点とする女性科学者たちの存在をより明確にすることを支援します。このカタログ冊子が世界中を回ることで、日本の優秀な女性科学者のストーリーがより広く知られるようになり、日本や世界の多くの少女や女性が科学の道を志すきっかけとなるでしょう。