膜生物学ユニット (河野 恵子)

 この世で最初の細胞が生まれたとき、そこには遺伝情報を司る核酸とそれを包み込む膜が存在しました。その瞬間から、膜の損傷を修復する細胞創傷治癒機構が必要とされたはずです。実際、細胞創傷治癒は進化的に保存された機構であり、ヒトではデュシエンヌ型筋ジストロフィー症を含む様々な疾患に関与することが少しずつ分かり始めています。しかしまだその全貌を俯瞰するには至っていません。我々のユニットでは、細胞生物学、生化学、遺伝学といった多角的なアプローチを用いて、細胞創傷治癒機構とその生理的意義を解明することを目指しています。これまでに我々は酵母を用いた研究で、細胞創傷治癒の開始にはプロテアソームによるタンパク質分解が必須であること(Kono et al., Cell, 2012)、また細胞膜損傷をモニターする細胞周期チェックポイントが存在すること(Kono et al., PNAS, 2016)などを見出しています。現在は研究対象をヒト培養細胞にまで広げ、がんや老化と細胞膜との関わりを明らかにすることを目標に研究を進めています。

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