カメラトラップ調査プロジェクト

OKEON美ら森プロジェクトでは、沖縄環境研究支援セクションの主導のもと、沖縄本島内24箇所のコア調査区に、通年で47台の定点カメラを設置して環境モニタリングを実施しています。ヤンバルクイナやケナガネズミといったやんばるを代表する動物たちから、沖縄在来のリュウキュウイノシシ、季節によって訪れる渡り鳥、影響が大きな外来種のマングース、ノライヌやノラネコなど、色々な生き物がこの島には暮らしていることを知ることができます。こうした映像データを長期間にわたって蓄積することで、沖縄に暮らす動物たちの今の姿やその移り変わり、種間の関係、人との関わり、その影響などを明らかにすることを目指します。沖縄在来の動物たちが暮らしてきた沖縄本来の環境を知ることで、次世代に沖縄らしい自然を受け継ぐことに貢献できたらと考えています。

沖縄の生物の基礎分布、生態調査

沖縄本島らしい自然というと、多くの場合やんばる地域がその代表として挙げられます。北部やんばる地域はもちろんヤンバルクイナやノグチゲラ、ケナガネズミなど貴重な動物が生息する、保全上最重要エリアです。ただ、やんばる地域はそれだけで独立しているわけではなく、島の中南部とつながり、常にお互いに影響しあっていますし、やんばる地域以外にも沖縄らしい自然環境はあるはずです。沖縄本島の生物多様性の保全や持続可能性を考えたときには、やんばる地域だけにとどまらず、島全体の現状や変化を捉えることが大切です。OKEON美ら森プロジェクトのカメラトラップ調査では、こうした観点から本島全域に展開するコア調査区を利用して、沖縄本島全体の動物の分布やその変化をモニタリングしています。こうした基礎調査は地味でコストがかかる作業の積み重ねですが、OISTの研究資金がこれを支えています。データが蓄積されることで見えてくる事象があったり、また、ひとたび大きな変化や問題が生じたときには、その解決や理解に大きな力を発揮したりすることが期待できます。

これまでの成果

最新のリュウキュウイノシシ分布データを沖縄県に提供

2020年の初めに沖縄県内で大きな問題となった、豚熱(CSF)の防疫に役立つ情報として、沖縄県からの依頼によりリュウキュウイノシシの最新分布データを提供しました。この豚熱(CSF)の発生は、沖縄の代表的な畜産のひとつである豚にとって大きな脅威です。ヒト側からみればリュウキュウイノシシは豚熱ウィルスを運ぶ媒介者となってしまう可能性がある反面、沖縄の自然環境にとって彼らは重要な構成員でもあります。共存しつつウィルスの伝搬を抑え込むためには、彼らの正確な分布の把握はその基礎的かつ重要な情報となります。問題が発生してから調査しても、とても間に合いません。平時からのモニタリングが力を発揮した好例になったと思います。

沖縄環境における分解機能の研究

寿命や捕食、あるいは事故や病気で力尽きた動植物、木から落ちる果実や種。地表にはこうした多くの動物や植物の亡骸などが発生し、それは他の動物などの糧になってやがて土に還ります。哺乳類から微生物まで、多くの生物が関わるこの過程は自然環境を支える基本的な循環の仕組みです。OKEON美ら森プロジェクトでは、帯広畜産大学と共同で、この沖縄の自然環境が本来もつ分解機能と、人の営みやそれに伴って持ち込まれた外来種がその機能に与える影響について研究しています。この分解過程の研究では、実際に野外でのカメラを使った観察をもとに、哺乳類や昆虫の役割について特に注目しています。


「環境科学セクション」トップページへ

「OKEON美ら森プロジェクト」トップページへ