Issue 5 2023年5月 チームワーク

 

今月のトピックチームワーク 

効果的なチームワークの要素としてはインクルーシブなコミュニケーション、チームダイナミクス(訳注:チームメンバーの関係への継続的な気配りチーム目標に対する共同目的意識が挙げられます高度に機能しているチームは、各メンバーがもたらす多様な経験、専門知識、視点の重要性を理解し、そういった違いに感謝することに積極的に取り組んでいます。そしてそのようなチームは、権力・特権と偏見に気づく見識があり、自分事として責任を認識しているという点も重要なポイントですチームの進化を特徴づける3つの重要な構造的要素には、以下のものがあります 

  • 相互に頼りあえるチーム体系・関係特徴が出現する主な例:プロジェクトの性質や目標達成プロセス目標の定義、共有、達成の方法、またパフォーマンスの評価レビューの方法 

  • チームダイナミクス(例:目標達成のプロセス、態度、変化への適応など) 

  • チームの境界線(例:組織構造、チームとしてのアイデンティティ、または他のチームからの認識

  •  

科学的根拠

 

上記の核となる要素に十分な注意が払われない場合、チームの創造性と生産性が阻害されます ( Hülsheger et al., 2009)。個々のメンバーが仕事の要件を満たすためだけに独立して行動したり、他の研究室の同僚とのフィードバックやつながりを求めないチームは、その潜在能力を最大限に発揮できません ( Salas et al., 2015)。善意があったとしても、対人関係構築のスキルが低い場合には、こうした構造的な問題を悪化させる可能性があります。また、組織の「ベテラン」(組織の一員であった期間が著しく長い人)が、新しいチームメンバーのアイデアや貢献を受け入れにくい場合、チーム全体が新たな機会や戦略から十分に恩恵を受けることが難しくなることがあります。チームのリーダーは、インクルーシブなリーダーシップ、説明・対応責任、チームプロセスの改善に対する明確なコミットメントを通じて、組織変革や移行期に重要な役割を担っています(Salas et al., 2015)。積極的な傾聴、明確で透明性の高いコミュニケーション、効果的なフィードバックの継続を通じて、チームリーダーは(チームメンバーとともに)、高機能なチームと思いやりと尊敬に満ちた文化を生み出す風土を育むことができるのです。 

 

今日からできる実践方法 

チームワークを高めるためのベストプラクティス 

個人レベルでは 

  • 自分のバイアス・偏見や(人や事象に対する)勝手な思い込み・前提に気づく 

  • チームメンバーが安心して自分の考えを言えるよう、また、新しいアイデアや挑戦困難を伴うアイデアの探求を促進するために、判断を急がない 

  • 技術や領域に特化した専門知識を補完するために、チームワークに特化した専門知識を身につける必要性を認識する 

チームマネジメントレベルでは 

  • 明確で継続的なコミュニケーションを測る基準を開発する 

  • どのような戦略を採るかを含め人間関係の対立管理・回避するための明確な期待値を設定する 

  • チームの活動チームミーティングやルーティンワークなど)に意図的な内省機会組み入れる 

  • 各メンバーの役割と責任を明確にし、かつ柔軟に対応する 

組織レベルでは 

  • 偏見により矮小化されやすい人々貢献とリーダーシップを自然に発揮しやすいよう、多様な代表を確保する 

  • チームワークを選考基準や有意義な業績評価における考慮事項として含めることにより、組織におけるチームワークが起きやすい環境を用意する 

教室内では 

  • 伝統的な伝達型の授業スタイルを避け、プロジェクト型、探究型、問題中心型、ケーススタディなど、グループでの考察を必要とするアプローチを採用し、学生や他の人がチームワークスキルを習得できるようにする(これらのアプローチは、慎重に下準備をする必要がある)。 

  •  

参考文献と関連資料

 

Benishek, L. E., & Lazzara, E. H. (2019). Teams in a new era: Some considerations and implications. Frontiers in Psychology, 10, 1006. 

Hall, K. L., Vogel, A. L., Huang, G. C., Serrano, K. J., Rice, E. L., Tsakraklides, S. P., & Fiore, S. M. (2018). The science of team science: A review of the empirical evidence and research gaps on collaboration in science. American Psychologist, 73(4), 532.

Hülsheger, U. R., Anderson, N., & Salgado, J. F. (2009). Team-level predictors of innovation at work: a comprehensive meta-analysis spanning three decades of research. Journal of Applied psychology, 94(5), 1128. 

O'Neill, T. A., & Salas, E. (2018). Creating high performance teamwork in organizations. Human Resource Management Review, 28(4), 325-331. 

Salas, E., Shuffler, M. L., Thayer, A. L., Bedwell, W. L., & Lazzara, E. H. (2015). Understanding and improving teamwork in organizations: A scientifically based practical guide. Human Resource Management, 54(4), 599-622.

Thayer, A. L., Petruzzelli, A., & McClurg, C. E. (2018). Addressing the paradox of the team innovation process: A review and practical considerations. American Psychologist, 73(4), 363.

Vogler, J. S., Thompson, P., Davis, D. W., Mayfield, B. E., Finley, P. M., & Yasseri, D. (2018). The hard work of soft skills: Augmenting the project-based learning experience with interdisciplinary teamwork. Instructional Science, 46, 457-488.