リアルタイムの社会的相互作用 Realtime Social Interactions

リアルタイムの社会的相互作用は、私たちの生活の感情的側面および認知的側面に極めて重要です。私たち人間は、非常に社会的な動物であり、人間関係により、自力では実行不可能なことが達成可能となり、人生が意義あるものとなり、幸福が確かなものとなり得ます。しかし、この他者への依存性はさらに深い意味を持つ可能性があります。個人の認知的達成の中には、頼りとなる社会的相互作用がなければ不可能なものも存在します。本ユニット内での一連の小規模なプロジェクトでは、認知神経科学的方法を使用して、リアルタイムの社会的相互作用が人間の脳および身体内でどのように実現されるかを調べ、計算機によるシミュレーションおよび群れロボットを使用して、個人の認知を変化させるための最小限の要件を精査します。 

ビデオ相互作用

最近の研究では、2人の人間が相互作用している(カードゲームをする、歌を歌う、会話をする)時には、2人の身体と脳が大きく同期し、動作、心拍数さらには脳波までもが共通のリズムに収束することが示唆されています。この同期化が多くの場合、より良好で快適な相互作用と関連していることから、同期化はリアルタイムの人間の相互作用の中核的な要素であると考えられます。しかし、それがそもそもどのように実現されているのか、そして相互作用の方法の違いがそれにどのような影響を与えているのかはまだよく理解されていません。本ユニットでは、多くのプロジェクトでこの問題に取り組んでいます。例えば、同期の最小モデルおよびリアルタイム最小触覚相互作用に焦点を当てたプロジェクトも進められています。ビデオ相互作用プロジェクトでは、デジタルモードの相互作用(ビデオチャットなど)が身体間および脳間の同期にどのように影響するかという高レベルの現象に取り組もうとしています。この問題は、近年の世界的なパンデミックの経験からも、特に重要な問題となってきています。 

二者相互作用シミュレーション

進化ロボット法に従った、行為主体ベースの最小認知シミュレーションを実施する多くのモデルを使用して、行為主体の神経および行動の複雑性における社会的相互作用の役割が検討されています。例えば、過去の研究では、社会的相互作用は、行為主体の神経活動の複雑性を、単独では達成不可能なレベルに高めることが示されています。

本研究では、これらの研究を拡大し、社会的相互作用がどのようにして異なる条件下で行為主体の神経および行動の複雑性を変化させるかをよりよく理解することを目指しています。そのために、行為主体をペア相互作用条件、ゴーストパートナー条件(行為主体の一方が事前に記録された行動を再現している)および孤立条件という異なる条件下に置き、行為主体の神経構造のニューロン数を変化させます。これらの条件を比較するために、統計解析および動的システム解析を使用し、複雑性の異なるマトリックス(通常はエントロピーに基づく)を検討して、データを解析します。例えば、本ユニットのより最近の研究では、社会的相互作用条件下にあるより小さな脳は、孤立条件下にあるより大きな脳に匹敵する複雑な神経活動を生み出すことが可能であることが示されています。

群れ相互作用

社会的相互作用における身体の役割に関する、計算機によるシミュレーションを超えた理解を可能にするために、Lego Mindstorms®キットを使用した、実際の群れロボットによる研究に焦点を移し始めています。

本ユニットの現在のプロジェクトでは、群れの補充行動などの共同作業を最適な形で実行することで、不慣れな環境でも食料源を協力して巣に移動させることを可能としている、アリのコロニーの行動からヒントを得て、自己組織化群れロボットに進化ロボット工学の手法を適用することを目指しています。さらに、さまざまな相互作用条件下でこれらのロボットの試験を行い、ロボットの群れのサイズや神経細胞の数を変化させ、これまでの結果との比較により新たな洞察を得ようとしています。