触覚相互作用 Haptic Interactions (PCE)

身体性社会認知および実験に基づいた社会認知の理論においては、リアルタイムの社会的相互作用の機序と役割を理解することが特に重要です。実際、社会的相互作用を可能にし、それを影響力の強い経験とする要素、または相互作用が人間の形成に果たす役割はほとんど知られていません。社会的相互作用における感覚運動性活動および神経活動の役割、社会的相互作用により生じる個人間の神経カップリングとそれを可能にするプロセス、その神経カップリングと感覚運動性カップリングの関係およびそれら2種のカップリング間の情報の流れ、これらのカップリングが示す、神経と感覚運動性が統合した社会システムの構造、さらにより一般的にはこれらの要素が人間の能力および疾患に果たす役割など、解明すべき疑問は多数あります。

触覚相互作用プロジェクトでは、最小の接触ベースの感覚運動性相互作用を調べ、それらから生じる脳-体-環境-体-脳のシステムを可能な限り詳細に測定することにより、さらに理解を深めようとしています。そのために、知覚交差パラダイムを使用して、最小の環境で接触を通した相互作用を可能とし、両被験者の脳および身体のシグナルを、EEGハイパースキャニングおよび生理学的測定を使用して記録しています。今後はさらに動作追跡も追加する予定です。

人生の最初と最後に経験する感覚である触覚は、人間にとって根本的な感覚です(ちなみに、Henri Poincaré、W. Ross AshbyおよびAlan Turingによる科学的発見につながった思考プロセスは触覚と関連しています)。バイナリまたは一次元の一次近似においても触覚の研究は有用です。指の触覚の有無は圧力で調整できます。知覚交差相互作用に関する過去の実験では、適切なインセンティブを与えることで、順序交代などの複雑なパターンが生じることが示されています。本ユニットでは、知覚交差で可能となる経験の範囲のさらに詳細な検討およびそこから発生する神経および感覚運動のダイナミクスの研究を開始しています。研究には、感情の共有、他の被験者が存在しているまたは存在していないという感覚および神経障害の初期診断法などの検討が含まれます。

参考文献

Kojima, Hiroki, Tom Froese, Mizuki Oka, Hiroyuki Iizuka, and Takashi Ikegami. “A Sensorimotor Signature of the Transition to Conscious Social Perception: Co-Regulation of Active and Passive Touch.” Frontiers in Psychology 8 (2017). https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.01778.