野村 陽子
野村 陽子 (サイエンス アンド テクノロジー アソシエイト)
日本女子大学大学院人間生活学研究科生活環境学専攻修了、博士(学術)
東京大学先端科学技術研究センター博士研究員(日本学術振興会特別研究員)、東京大学先端科学技術研究センター荏原製作所寄附講座(環境バイオテクノロジー)教員(助手)、東京工科大学助手などを経て、2004年に渡米。カリフォルニア大学デービス校工学部でプロジェクトサイエンティスト(シニアサイエンティスト)として合成生物学等のプロジェクトに10年間ほど従事。2015年7月より沖縄科学技術大学院大学。核酸化学・工学ユニット(横林ユニット)に所属。
最近のプロジェクトとその展開
1、動物細胞内で効率よく機能する人工リボスイッチの探索(横林ユニット)
遺伝子発現の調節に関する研究は、主に医用工学的な応用を目的として、多種多様に行われています。遺伝子発現の調節因子として、タンパク質をコードしない数100塩基までの短いRNAによるものがあります。私たちはこのようなRNAの中でも、特定のRNA 配列を自己切断するリボザイムや、ある物質に特異的に結合するアプタマーに注目しています。これらのRNA 配列を遺伝子工学的に変化させて、動物細胞内で効率よく遺伝子発現を調節できる配列を探索する研究を行っています(Y. Nomura, D. Kumar, Y. Yokobayashi, Chem. Comm., 2012)。
たとえば、アプタザイム(リボザイムにアプタマーを結合させた配列)の一部の配列を変異させて200-300種類から成るRNAライブラリーを作り、動物細胞に導入し、十分に機能するかを調べます(スクリーニング)。可能性のある配列についてはその立体構造を踏まえてさらに変異させ、より効率よく働く配列を特定します。応用として、2つのアプタザイムをつなげてロジックゲート(NORゲート)も構築しました(Y. Nomura, L. Zhou, A. Miu, and Y. Yokobayashi, ACS Synthetic Biology, 2013)。
また、最近では大規模シーケンシングにより得られた配列をヒトの細胞内で働かせることに成功しました(S. Kobori, Y. Nomura, A. Miu and Y.Yokobayashi, Nucleic Acids Research, 2015)。大規模シーケンシングではより多くのリボザイム活性を測定できることから、今後の応用が期待できます。またここで得られた、人工リボザイムの知見は、バイオセンシングの認識エレメントとして利用可能な配列の探索にも応用できるでしょう。
2、絹などの天然繊維への機能性の付加
絹は被服材料として利用されるほかに、その生体適合性や生分解性などから様々に応用可能な生体材料です。絹のより広範囲な応用を見すえ、絹を構成するタンパク質の1つであるフィブロインに結合するアミノ酸配列(QSWS)を、4X1010のペプチドライブラリーからファージディスプレイ法により選択しました(Y. Nomura, V, Sharma, A. Yamamura and Y. Yokobayashi, Biotechnol. Lett., 2011, Academic Federation’s Innovative Developmental Award 2009-2010 in UC Davis)。この配列や、今後、新しく選択していく配列を用いて、有用な性質を天然繊維に付加していくことを考えています。
発表論文:https://groups.oist.jp/stg/yoko-nomura-list-publications