三線プロジェクト
三線の技術的研究と保存修復
このプロジェクトでは読谷村立歴史民俗資料館が所蔵する二丁の古い三線(沖縄の弦楽器)の研究を行っています。
三線とは沖縄の楽器で「三つの弦を持つ」という文字通りの訳からきています。元来は、14~15世紀頃に中国から似たような楽器が沖縄へと伝わりました。これらの楽器は沖縄の三線として発展し、引き続く日本本土の三線の前身でもありました。琉球王朝時代には、宮廷内や行列で演奏され、時を経て、三線は上流階級から武士階級の人々に使われ、後に一般の人々にも使われるようになりました。三線は、現在でも沖縄音楽にとって重要な役割を担っています。
この研究によって二丁の三線が通常用いられる蛇皮で覆われていない可能性が出てきました。したがって、この三線の皮を確かめるためにOISTの生物学者はマス分光機を用いて調査しました。皮の特定を行うことは、三線がどのように作られたのか、また、先代の沖縄の人々の貿易業に対する理解を深めることができます。
修復処置
三線#1
修復前:
三線の皮の表面部分が虫喰いによって、所々に斑点の穴があります。更に(胴の部分を覆っている)織の部分に損傷と漆が施された部分の剥落、調弦の故障、そして弦の取れが見られます。
三線、修復前 三線、修復後
修復後:
始めに三線についた汚れや埃を丁寧にブラシではらい、吸引しながら取り除きます。そして漆の表面は溶剤と特別配合されたキレート溶液で洗浄していきます。漆の表面に沿って影響を与えないよう注意を払いながら汚れを除去します。修復には覆っている皮の部分と胴巻きの織の部分に日本製の薄絹を使っています。漆の首の部分の小さな損失(欠損)は、アクリルの補修材と顔料アクリル樹脂で補彩されます。最後に、壊れた弦は調弦され、しかるべき場所に巻かれた後、結ばれます。修復後、三線は安定した状態になり、鑑賞者は修復前の破損を気にすることなく三線を鑑賞することができます。
三線 #2
修復前:
三線の首部分を覆っている漆がはがれている状態で、その大部分が欠落しています。これは湿気などの変動と、首の木地の部分と漆の膨張と伸縮の違いによるものかもしれません。処置前は、皮に引っかき傷や剥落部分がありました。 太鼓の正面に古い皮のあて布があります。このあて布は皮の損傷をカバーするためにあてがわれました。布の装飾部分は新しく取り付けられもので、この三線に元々ついているものではないかもしれません。しかしながら、布には箪の擦り切れ部分やシミが見られます。
修復後:
この三線の修復処置は現在も進行中です。