陶器プロジェクト

 

17~18世紀の沖縄各地の窯から出土した陶磁器の特徴づけ

沖縄には豊かな陶器の歴史があり、現在も盛んに行われています。沖縄の陶磁器は主に土器や炻器から成り、釉薬が施された上焼(ジョーヤチ)や無施釉の荒焼(アラヤチ)も含まれます。

この研究の目的は、17~18世紀に沖縄各地の窯で作られた陶器の起源を科学的に測定し特性を明らかにすることです。 まず初めに、この総合的研究は科学的方法を用いて沖縄の陶器を特徴づけます。次に、沖縄本島と石垣島など、沖縄の離島各地で作られた陶器との相違点を調べる方法を調査しています。

共同研究機関:

 

博物館

窯の代表的な場所
壺屋焼物博物館 壺屋窯 沖縄本島
読谷村立歴史民俗博物館 喜名窯 沖縄本島
沖縄市郷土博物館 喜名窯 沖縄本島
沖縄県埋蔵文化センター 湧田窯 沖縄本島
石垣市立八重山博物館 黒石川窯 石垣島
琉球大学 阿香花窯 石垣島

 

この研究に用いられた科学技術の例
 
蛍光X線分光(XRF)

XRFはX線を用いて物質の構成要素を特定するのに使われる分光法です。このプロジェクトでは沖縄の陶器に見られる構成要素を特定するために使われます。沖縄の陶器は主にシリコン、アルミニウム、ポッタシウム、鉄、酸素から構成されています。しかしながら、XRFによって特定されたその他の微粒な構成物質も含まれてしまいますが、また陶器の産地や起源を特定するのにも使うことが出来ます。

X線回折

XRDはX線を用いて原子構造や結晶質の間隔を測定するものです。我々はこの技術によって石英、アルミニウムケイ素酸化物、鉄酸化物などの沖縄陶器に見られる鉱物を測定します。更に、これらの陶器の正確な鉱物相を特定することによって、陶器が元来焼成された窯の温度も知ることが出来ます。

顕微鏡検査法

顕微鏡検査により、沖縄の陶器をより深く詳細に見ることができます。走査電子顕微鏡、透過性電子顕微鏡、偏光顕微鏡、ステレオ双眼顕微鏡も含まれます。これらは構成物や鉱物を特定するのに使われ、陶片サンプルの配分を測定するために使われます。さらに、上記の高解像度現微鏡は沖縄陶器のミクロ、ナノ構造を調べるのにも使われ、また同様に陶工が陶土に(硬さを加えるなど)調整したことなども特定することが出来ます。

 

この研究の重要性とは?

 焼物は何千年もの間沖縄で作られ、その製造と利用は文化的に重要です。琉球王国としての沖縄独特の国際上の歴史は、工芸品の起源に興味深い歴史的疑問を投げかけます。例えば、製造技術の発展、工芸品の起源、そして沖縄の工芸品を作るための原料の起源などです。

沖縄は日本本土、台湾、中国、韓国と地理的に理想的な位置関係にあり、それが沖縄を理想的な貿易港にしています。1609年の薩摩による侵攻は沖縄の人々の生活に大きな変化をもたらし、その時代の陶器にそれを知る手掛かりが残されています。またこの頃、陶器に釉薬が施す技術が沖縄に伝わりました。従って、17~18世紀の沖縄陶器は多様性、質、共に向上し、様式的にも変化していきました。これらの要素が合わさり、17~18世紀は沖縄の人々の生活と陶器について研究するのに非常に興味深い時代となっています。

琉球王国の貿易は、沖縄に芸術的様式や芸術品に使われた原料、そして沖縄の考古学に様々な影響をもたらたしました。原料の輸出入や輸送、対抗する陶器類の売買、そして様式の類似性によって、どの陶器がどの窯で作られたか見分けるのが非常に難しくなっています。この研究は過去の沖縄陶芸の技術を明らかにすることを目的としており、当時の人々の貿易について考察を寄与するものです。

 

                   現在の窯、読谷陶芸村(やちむんの里)