「瀬良垣島・クマノミ育成プロジェクト」について

2021年6月

ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド沖縄による「瀬良垣島・クマノミ育成プロジェクト」サイト      link

「瀬良垣島・クマノミ育成プロジェクト」は、ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド沖縄が、瀬良垣島周辺のカクレクマノミの保全を行うこと、そして将来的に新しい観光プログラムの開発を通じて地域振興に貢献することを目指して行う事業です。OIST海洋気候変動ユニットは、この事業において監修を担い、下記のことを行います。

1)放流場所の決定

瀬良垣島周辺および恩納村海域のカクレクマノミの生息環境を調査し、放流する個体が生活史(その個体の一生)をまっとうできると推測される環境を放流場所に選びます。

2)放流個体の選定

カクレクマノミの繁殖個体の放流によって懸念される野生個体群の遺伝的撹乱が受容可能な範囲であることを科学的に検証するために、以下の要領で集団の遺伝的解析を行います。

瀬良垣島周辺および恩納村海域に生息する野生のカクレクマノミの個体を現場で採捕し、個体の尾ヒレの一部を試料として採取した後、個体をもとの生息場所である宿種のイソギンチャクに戻します。また放流個体として選定する予定のOISTマリン・サイエンス・ステーションで飼育した幼魚についても尾ヒレの一部を試料として採取します。これらの試料について、マイクロサテライトマーカーを使用した集団の遺伝的解析を行い、得られたDNAの情報を用いて、飼育個体および自然下に生息する集団の遺伝的多様性を調査し、保全の目的に適する遺伝的撹乱のないと推測される放流個体を選定します。

今年度の取り組みとして、カクレクマノミ幼魚20匹(10ペア)を放流し、自然界での繁殖による自立した個体群の形成に貢献することを目的としています。

3)放流後のモニタリング

放流個体を含め、放流場所の集団の生息状況(生残、繁殖個体数、環境変動への応答など)を毎月モニタリング調査します。放流した個体が繁殖をおこなった場合、可能な限り、子孫について遺伝的解析を行い、遺伝的影響を把握します。また、野生のカクレクマノミについても、新規個体が確認された場合、これらの個体の解析をし、近縁関係(放流個体の影響)について評価します。これらのモニタリング結果は常に本プロジェクトににフィードバックされ、保全の実効性の向上を図ります。

(写真)海洋気候変動ユニット(ラバシユニット)メンバーがカクレクマノミの尾ビレの一部を採集している様子