2013年度年次報告

量子波光学顕微鏡ユニット

教授 新竹 積

要約

1.当ユニットでは低エネルギー電子線を用いた電子回折顕微鏡(フーリエ・ホログラフィー)の研究開発を行っている。2013年度には回折電子線の輸送系と検出用鏡筒の開発を当ユニット単独で行った。現在、ホログラフィーに最適化した照明系とサンプル作成の技術開発をしている。2013年度以前にはホログラフィーからの位相回復と実像復元の数値計算方法の基礎研究、日立ハイテクサイエンス社との電子回折顕微鏡の共同開発を行ってきた。

2.当ユニットが開発している海流発電装置は海流の運動エネルギーを電気に変換する。装置は海底に設置されたアンカーに係留し、水中を”飛行”する。そのため係留システムの安定性は,海流発電を実現するために重要な技術となる。係留システムの安定性を実証するため,海流発電機の小型模型を開発した。小型模型は回流水槽に設置され,色々な流速と波の条件下で浮体(小型模型)の安定性を観測した。この実験により,当ユニットの係留システムは驚くほど安定であることが実証された。

1.スタッフ

  • 白澤 克年、スタッフサイエンティスト
  • 平井 照久、スタッフサイエンティスト
  • 安谷屋 秀仁、ポストドクトラルスカラー
  • 山下 真生、ポストドクトラルスカラー
  • チャン  マーティン  フィリップ、ポストドクトラルスカラー
  • 藤田 潤、技術員
  • 南 潤一郎、技術員
  • カラレ チョラ、OIST PhD Student
  • 下嶋 亜由美、リサーチアドミニストレーター

2.共同研究

  • テーマ:海流タービンの開発
    • 共同研究の分類:共同研究
    • 研究者
      • 岩下英嗣 教授,広島大学
      • 徳永紘平(修士2年) 広島大学

3.研究成果

3.1 電子顕微鏡開発グループ

回折電子顕微鏡概念設計

 コヒーレントなビームより得られた回折像に位相回復法を繰り返し行うことによって、回折像の位相を確定し実像を構築することは原理的に可能である。この方法は対象物体が二次元構造のみの場合には回復した位相は一意的であり、正確な実像が構築出来るが、対象が三次元構造を持つ場合は位相が一意的に回復出来ない。我々は、この問題はホログラフィーによる実像構築法により解決可能であることが分かった。この手法を生体サンプルに適用する場合、サンプルの損傷を回避するため、照射電子のエネルギーは1KeV以下であることが望ましく、サンプル厚は照射電子が透過するために充分薄い必要がある。

conceptual design

図3.1.1:  単一レンズ光学顕微鏡とレンズレス回折顕微鏡の基本概念。磁気レンズ特有の幾何収差を除去でき、よって原子サイズの分解能をもつ顕微鏡を実現できる。

回折電子顕微鏡の開発

 2012年度にイオンビーム加工が可能な走査型顕微鏡本体の開発を行い、イオンビームにより数百ナノメートル程度の微細加工が可能となった。
 2013年度の主な成果は、数キロ電子ボルト以下の電子線回折パターン取得が可能な検出器鏡筒の開発である。この検出器鏡筒は独自の電子光学と8k x 8kの二次元CMOSセンサーを特徴とし、これによって低エネルギー電子の原子間距離レベルのブラッグ回折パターンの取得が可能となる。
 当ユニットは現在、実際のウイルスサイズのテスト試料をメタルコートしたTEMグリッドへの作成技術、テスト試料から回折パターンの生成、回折パターンから安定した実像復元計算方法、低加速観測用のウイルスサンプル作成法を研究中である。

図3.1.2:  OIST電子顕微鏡;左側よりDMF4000、回折電子線検出器鏡筒、F816CMOS検出器。

図3.1.3:  加速10KeVの電子ビームと30ミクロン径アパチャーによるフレネル干渉縞をF816検出器で撮影。電子ビームの高いコヒエレンスを示している。

 

3.2 海流発電グループ

小型模型の製作

 係留システムの安定性を確認するため,回流水槽による試験を行った。そのために,海流発電機の小型模型を製作した。図3.2.1に小型模型の設計図と写真を示す。ローターの直径は250 mmである。この小型模型はナセルの内部に発電機を模擬するためのトルクリミッターと呼ばれる部品が内蔵されている。フロートは浮力を発生するめにFRPで作られている。抵抗力を実験の条件に合わせるために,ブレードのピッチ角を調整した。

 

protype machine

図3.2.1:  小型模型の写真と設計図

回流水槽による係留試験

 回流水槽による試験は株式会社西日本流体技研で行なわれた。その試験水槽は造波装置を備えている。観測部のサイズは長さ48 m, 幅 4m, 深さ1.6 mである。実験のセットアップを図2に示す。係留索の張力を測定するために荷重計を設置した。係留索には直径0.3 mmのステンレスワイヤーを使用した。図3.2.2に側面の透明な壁から撮影した写真を示す。この実験では当ユニットの回流発電機がとても安定に動作することが分かった。

 

1st Demonstration

Figure 3.2.2:  実験の模式図

1st Demonstration

Figure 3.2.3:  回流水槽による係留試験の写真

4.研究業績

4.1 雑誌

  1. 海流発電の現状と課題、将来展望 300台で原発1基分の”秘めた可能性”,新竹積,月刊ビジネスアイ エネコ 2013年8月号

4.2  講演発表

  1. 浮体式による海流発電機の開発,白澤克年新竹積,徳永紘平,岩下英嗣,日本船舶海洋工学会 春季講演会,2013/05/27
  2. 海流発電タービンの発電特性に関する研究,徳永紘平,岩下英嗣,白澤克年新竹積,日本船舶海洋工学会 春季講演会,2013/05/27
  3. OISTにおける海流発電機の開発,白澤克年,九州大学応用力学研究所研究集会 海洋エネルギー利用に関するテクノロジー,2013/01/10

5.イベント

5.1 Beam Physics Workshop 2013

  • 日付: 2013年11月28日~30日
  • 会場: OIST キャンパス センター棟, OIST シーサイドハウス
  • 主催者: 新竹積(OIST)
  • 共催者: 宮本篤(広島大学)
  • 講演者:
    • Masao Kuriki (Hiroshima University/KEK), "An optimization of Positron Injector of ILC"
    • Junji Urakawa (KEK), "The status of conventional positron source for ILC"
    • Yusuke Honda (KEK), "Commissioning of Compact-ERL injector"
    • Tsukasa Miyajima (KEK), "Low emittance electron beam transportation from photocathode DC gun"
    • Shigemi Sasaki (Hiroshima Synchrotron Radiation Center, Hiroshima University), "Recent Progress : Undulator Radiaton Carrying OAM"
    • Keshav Dani (OIST), "Introduction to 4D Electron Microscopy"
    • Jinfeng Yang (Osaka University), "MeV Electron Diffraction and Microscopy"
    • Anusorn Lueangaramwong (Electron Light Science Center, Tohoku University), "Study of Longitudinal Phase Space Distribution Measurement via a Linear Focal Cherenkov Ring Camera"
    • Hiroyuki Hama (Electron Light Science Center, Tohoku University), "Transverse Emittance Exchange for Smith-Purcell Backward-wave Oscillator FEL"
    • Kei Fukushima (Hiroshima University Graduate School of Advanced Sciences of Matter), "Study of integer resonance crossing in non-scaling FFAGs with an ion trap system"
    • Naoto Yamamoto (Nagoya University), "Beam injection study at aichiSR and UVSOR-III"
    • Yoshihisa Iwashita (Kyoto University), "Thin Film on Bulk Conductor"

5.2 セミナー

タイトル: Exploring structured polymeric materials with electron tomography

    • 日付: 2013年7月29日
    • 会場: OIST キャンパス 第一研究棟
    • 講演者: Hiroshi Jinnai, Ph.D. (Leader & Research Manager, JST ERATO Takahara Soft Interfaces Project, Research Professor, Institute for Materials Chemistry and Engineering, Kyushu University)

    タイトル: Soil erosion on agricultural land and sediment management for agricultural watershed in Okinawa, Japan

    • 日付: 2013年10月17日
    • 会場: OIST キャンパス 第一研究棟
    • 講演者: Kazutoshi Osawa, Ph.D. (Associate Professor of Faculty of Agriculture, Department of Environmental Engineering, Utsunomiya University)

    タイトル: Structural and functional studies of the Type Ⅲ Secretion system of Shigella flexneri

    • 日付: 2013年10月30日
    • 会場: OIST キャンパス 第一研究棟
    • 講演者: Martin Cheung, Ph.D.(Post-doctoral research assistant, University of Bristol)