黄金言葉(くがにくとぅば)パート1

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  • イントロ

  • 命どぅ宝ー命こそ宝

  • 家習る外習ー家での習慣は外での習慣

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イントロ

ある文化を垣間見るいい方法はその文化圏に住む人が普段使っていることばを通して文化を見てみることだと思います。例えば、世代を越えて引き継がれてきたことわざや言い回しなどからその文化圏の人々の文化、自然、歴史、人生、美徳等についての視点を学ぶことができます。

沖縄には、「黄金言葉(くがにくとぅば)」という言葉があります。黄金言葉は、「ことわざ」とか「教え」といったものに類似している言葉です。これらの黄金言葉は沖縄の庶民の日常に深くつながりのある言葉で、長い時間をかけて世代から世代へ受け継がれてきた言葉でもあります。また、黄金言葉は子孫がより良い人生を歩んでいくために人生の中で大切なことを先祖の経験を元にして発展してきた言葉です。私たちの先祖が子孫への強い願いを感じます。もしかすると既にいくつかの黄金言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。中には少し手厳しいもの、中には私たちを力づけてくれるもの、また中には詩的なものもあります。このシリーズでいくつかの黄金言葉を皆さんと一緒に楽しむことができればと思います。

命どぅ宝(ぬちどぅたから)ー命こそ宝

短いものから初めていきましょう。沖縄の人の間で最も知られている黄金言葉のうちの一つでしょう。この黄金言葉は「私たちが持っている全てのものの中で、命は最も大切にしなければいけない、失ってしまえば二度と取り戻すことができない」

命どぅ宝という表現は1930年代初頭に書かれた戯曲の中の台詞が原典とされています。その戯曲の舞台となったのは1800年代末期、琉球処分が行われ、琉球王国最後の国王、尚泰王が東京への引っ越しを余儀なくされた時代です。劇の最後に尚泰王役が 「いくさゆもしまち みろくゆもやがて なじくなよしんか ぬちどぅたから(争いの世もやがて終わり、弥勒の世がやがてやってくる。臣下よ嘆かないでくれ。命あっての物種だ)」という琉歌を詠む台詞があるそうです。

この黄金言葉は沖縄戦後、沖縄の人の間で急速に広がっていったと言われています。戦争を体験した世代の方々から次世代の人たちは二度と自分たちと同じ苦しみを味わってほしくないという願いのこもった貴重な教えです。この黄金言葉は沖縄平和祈念公園の石碑(写真1)に刻まれています。また、この黄金言葉は映画や演劇のタイトルなどにも使われたりしています。

下記: (写真1) 沖縄平和祈念公園にある「命どぅ宝」という黄金言葉が刻まれた石碑

家習る外習(やーなれーるふかなれー)ー家での習慣は外での習慣

この黄金言葉は私の母がよく私の家での悪い習慣を直しなさいという意味で使っていた言葉です。この黄金言葉は私たちの家で普段している悪い習慣はどんなに隠そうとしても人前でも出るものであるという教えです。家の中で誰に見られていなくても他の人にどのように見られたいかを意識して行動すべきである、そうしないと、他の人に見られたくない側面を見られることになり、恥をかきますよと言っています。

 

黄金言葉パート1はこれで以上です。他の黄金言葉も今後紹介していく予定です。沖縄のお友達と黄金言葉について聞いてみたり、またそれらについての沖縄の人の意見を聞いたり、自分の意見などを交換することによって沖縄の文化への理解をより深めていただけたら幸いです。

This post was developed by Yoshimasa Nakamura (Resource Centre)

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