研究安全

OISTの安全衛生体制について

2016年11月14日に発生した潜水事故を受けて、沖縄科学技術大学院大学(OIST)では安全衛生体制を強化してきました。本学のピーター・グルース学長の指揮の下、研究担当ディーンオフィスにより整備され、実施されてきた安全強化に向けたそれらの対策を以下に記述します。

1.互いに尊重し合う職場およびハラスメント防止について

OISTでは、2017年9月21日に全教職員・学生を対象に、互いを尊重し合う職場の実現とハラスメント防止に関するセミナーを日英それぞれの言語で開催しました。同セミナーでは、本学の基本理念の一つである「互いに尊重し合う職場」について再確認するとともに、ハラスメントに関する通報窓口についても説明が行われました。

2.安全研修および健康診断実施の義務

OISTでは全教職員・学生による安全研修の受講および健康診断の受診を監督するための電子システムを導入し、状況をモニターしています。野外活動に参加する者は、一次救命処置トレーニング(応急処置講習(first aid)及び心肺蘇生講習(CPR))を実地研修として受講し、野外活動一般講習(オンライン)ならびにその他必要な研修を受講することが義務付けられています。教職員・学生の一人ひとりが、そして直属の上司も、研修と健康診断実施状況をすぐに確認できるようになっています。

3.野外活動安全委員会

OISTでは野外活動安全委員会を発足しました。本委員会のメンバーには作業潜水の専門家(日本潜水協会技術顧問、元自衛隊潜水員)、琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設の海洋調査コーディネーター(技術専門職員)及びダイビング安全主任者(下述)も含まれます。本委員会は、OISTの野外活動全般にわたる野外活動計画書を厳しく審査します。

4.緊急時対応コーディネーターの採用

火災や地震、津波などOIST学内で発生しうる緊急事態へどのように対応するかを想定した戦略的な計画を立てるために、緊急時対応コーディネーターの採用を行い、福岡幸二氏が2018年2月に着任しました。地震津波の事業継続計画(BCP)及び各ユニット・セクションの部屋に掲示する火災対応マニュアルを作成するとともに、OISTコミュニティに火災・地震発生時の対応について教育訓練を行いました。また、シーサイドハウス利用者及びシーサイド教員宿舎居住者などを対象とした大津波避難訓練を航空自衛隊と共同で2018年9月に実施しました。

5.ダイビング安全主任者の採用

OISTでの潜水活動にかかる健康および安全面を監督するダイビング安全主任者として、日英バイリンガルでダイビングインストラクターとしての豊富な経験を有する小澤順一氏が2019年3月1日に着任しました。

6.ヒヤリハット報告

OISTでは些細な事故やニアミスに関する積極的かつオープンな報告を推奨しています。オープンな報告とは、報告者または発生したニアミスに関わった人が懲罰を受けることがない、という意味です。懲罰を設けないことで、研究者や学生たちがニアミス発生の事実について伏せておくのではなく、報告することを奨励します。このような啓蒙活動の一環として、ニアミスに関するポスター20枚を2017年11月の安全強化月間中に研究棟1と3を結ぶ通路で掲示しました。2018年度においては、新たに10枚のニアミスや軽微な事故に関するポスターを作成し、11月の安全強化月間から学内に掲示しました。

 ヒヤリハットポスター2017

 ヒヤリハットポスター2018

7.安全強化月間

本学では、毎年、潜水事故が発生した11月を「安全強化月間」と定め、学内の安全体制について考えを深め、更なる改善点はないかということに改めて意識を向けることにします。

故人を偲ぶ全学の取り組みの一環として、2017年11月13日に、鈴木祥平氏の追悼講演会を開催しました。本講演会では、OISTの佐藤矩行教授が海洋科学に関する追悼講演を行った他、エヴァン・エコノモ准教授が新種のアリに祥平氏の名前を命名し、アリの写真の贈呈と合わせ命名に込められた思いを鈴木博士のご家族に共有しました。

また、安全な野外活動の促進と普及を目的とした「鈴木祥平研究安全基金」の設立を発表しました。2017年11月30日から基金への寄付の受付を開始しており、鈴木祥平博士のご家族やピーター・グルース学長、研究担当ディーンのメアリー・コリンズをはじめとするOIST職員の一部が、本学内の安全文化を高めるという趣旨のもと、鈴木祥平安全基金へ寄付を行いました。また、同基金では、学内における研究安全や安全トレーニングに対する意識を高め、学生や経験の浅いOISTの研究者や技術者が研究安全を含むフィールドワークに必要な技術を身につけることができるよう、2018年5月から研究安全助成プログラムの公募を開始し、これまでに6件の助成を行いました。

新しい安全スローガンを選定するための学内コンテストを実施し、パラニ氏提案の”Know safety, No Pain”が2017年度のスローガンに決定し、同スローガンのポスター(50枚)が学内全体に掲示されました。2018年度は、” Get SMART use SAFETY from the START”が新たな安全スローガンとして採用され、学内に掲示されました。

 スローガンポスター2017

 スローガンポスター2018

2017年度の安全強化月間においては、東京大学教授大島義人氏を講師として招き、部署の長の安全衛生に関する意識及びスキルの向上を目指した安全衛生に関する職長教育を2017年11月24日に開催しました。

そのほか、安全衛生に関するアップデートセッション(11月24日)、特別安全講演(名古屋大学環境安全衛生管理室教授 富田賢吾氏)(11月24日)、研究安全に関するポスター掲示(11月中)、化学安全の実地講習(11月6日、7日)、個人防護具の抜き打ち査察(11月中)を安全強化月間の取り組みとして実施しました。

2018年度の安全強化月間においては、サイエンス・テクノロジー・グループのヴラディミル・ディネッツ博士による「野外活動安全」に関するセミナーが2018年11月1日に開催されました。このセミナーにおいては、同博士の過去の野外活動の経験を、世界各地で撮影した素晴らしい野生動物の写真とともに紹介し、安全に野外活動を実施することについての重要性について講演しました。

また、自然災害・重大事故で死傷者が多数発生したときの「多数傷病者への対応(MCLS)」に関する教育トレーニングを2018年11月27日に実施しました。本教育トレーニングにおいては、(1) 災害医療と多数傷病者対応の原則、(2) 現場・応急救護所における多数傷病者の救助及び医療活動、(3) 災害時における現場の指揮とコントロールについて学びました。

8.業務委託

外部調査委員会報告書により勧告を受けた通り、OISTでは作業潜水活動については外部委託することとしました。その場合であっても、潜水作業を委託する者は野外活動計画を作成し、同計画書は野外活動安全委員会によって審査されます。

9.より強固な安全衛生部署を目指して

前述の通り、緊急時の対応にあたるコーディネーターの採用を行いました。また、野外活動の安全管理を図るための野外活動安全委員会のサポートを行う野外活動安全スタッフとして、金城小百合氏が2018年4月に着任しました。今後も、OISTでの安全衛生担当職員を拡充することで、該当部署を強化して参ります。

更新日付:2019年4月1日