酵母でメタボライトを効率的に産生:アスタキサンチンを例に (No. 0218)

 
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概要

酵母による価値の高い代謝物の産生は、バイオマニュファクチャリングにおいて非常に大きな可能性があります。しかし、既存の方法では、遺伝的不安定性や短いライフサイクルのために代謝産物の収量が低いという問題があります。OISTの研究チームは、酵母の二次代謝産物の産生量を飛躍的に向上させ、製造コストを大幅に削減する新しい方法を開発しました。この方法では、酵母を寒天マトリックスに閉じ込めることでゲノムを安定化させ、ライフサイクルを延ばします。実証実験として、カロテノイド色素であるアスタキサンチンの生産を行いました。アスタキサンチンは、身を赤くするためにサーモンの養殖で広く使用され、また抗酸化作用があることから、化粧品や栄養補助食品にも使用されています。この実験では、従来の方法と比較してアスタキサンチン収量を10倍以上増加させることに成功しました。この画期的な製造プラットフォームは、ペプチド、ホルモン、抗体などの様々な高価値物質にも応用可能です。

 

ユージーン・クロール

サイエンス・テクノロジーグループ

Applications

  • バイオマニュファクチャリング
  • 製薬
  • 産業用バイオテクノロジー
  • 食品

 

利点

  • 高価値の代謝物を低コストで生産するためのプラットフォーム
  • アスタキサンチン収量が14倍に増加
  • 天然アスタキサンチンの低コスト生産

酵母をマトリックスに閉じ込めることで、二次代謝が活性化され、アスタキサンチンの産生が増加

天然の鮭は、アスタキサンチンを含む甲殻類を餌として食べるので、身が赤色になります

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技術のポイント

変異Phaffia Rhodozyma酵母株を、特定の条件下で寒天やアルギン酸塩に閉じ込めます。化学マトリックスに細胞を閉じ込めることよって、細胞分裂が妨げられ、二次代謝が活性化されます。これにより、遺伝子操作された宿主微生物にしばしば見られる不安定性が解消し、酵母細胞内でのアスタキサンチンの産生量が飛躍的に増加しました。このプロセスで得られるゲルビーズはアスタキサンチン含有量が高く、餌に混ぜてサーモンに直接与えることができます。また、アスタキサンチンを抽出・精製し、持続可能に生産された天然の赤色色素として、化粧品、栄養補助食品、食品などに使用することも可能です。

 

メディア掲載・プレゼンテーション

 

問い合わせ先

  Graham Garner
技術移転セクション

  tls@oist.jp
  +81(0)98-966-8937