OIST-KEIOサマーキャンプ 2023
逆境の中での科学の探求:
昨年の成功に引き続き、OIST-KEIOインターナショナル・リサーチ・サマーキャンプ2023が7月31日から8月10日まで開催されました。沖縄科学技術大学院大学(OIST)が主催するこのサマーキャンプは、参加者である慶應義塾大学医学部の学生20名にとって、刺激的で学びや成長の機会に富むものとなりました。意欲溢れる20名の「キャンパー(キャンプ参加者)」たちは、最先端の研究がどのように実施されているのか、OISTでそれを直接体験することができました。サマーキャンプ期間中に未曽有の台風に見舞われましたが、そんな困難にもかかわらず、20名のキャンパーとOISTチームは、プログラムを実り多いものにするために最善を尽くしました。このサマーキャンプは、2020年以来戦略的パートナーシップを組んでいるOISTと慶應義塾大学との間の強い絆を象徴するものでもあります。
嵐の中、基礎研究の世界へ
サマーキャンプのいちばんの目的は、参加者たちが革新的な科学研究に没頭し、実際にそれを体験することです。研究室での様々な作業に従事することで、キャンプ参加者は基礎科学に対する理解を深めることができました。しかし残念なことに、大型台風が直撃したことによってスケジュールのかなりの部分が中断され、予期せぬ事態が起こったり当初の予定が変更されたりもしました。
そのような状況の中、OISTの研究ユニット長(PI)やスーパーバイザー、サマーキャンプ運営委員のスタッフらに支えられ、参加者の学生たちは類まれなる強さと適応力を見せてくれました。困難をユニークな学習体験に変え、OISTの専門家たちが指導するワークショップやディスカッション、セミナーの場で様々な科学分野について、深く探求することができました。
今回のプログラムの目玉は、学生たちがOISTの研究ユニット、特に分子生物学、神経科学、環境科学の研究ユニットでの研究活動に参加するという特別な機会を得られたことです。サマーキャンプ参加者は15の研究ユニットに配属され、各研究ユニット長やスーパーバイザーの指導の下、現在進行中の科学的研究とその実践的応用について理解を深めました。さらに、OIST研究者と参加者たちがお互いに意見を交わすことのできる場が、活発なディスカッションや実践的なセッションを生み出し、学生たちが自ら質問したり、意見交換したりすることで、彼らの科学的な視野を広げることにもつながりました。
研究活動の枠を超えて
サマーキャンプの主な目的は、学生たちにより実践的な研究活動に足を踏み入れてもらう事でしたが、その体験をより充実したものにするために、多様なプログラムが提供されました。ジェンダー・多様性に関する授業、研究倫理に関するディスカッション、OIST博士課程の学生らとの沖縄での生活についての会話の機会などが、研究活動と並行して行われ、学生たちの学問的視野を広げるだけでなく、未来の研究者としての彼らの倫理的配慮や文化的認識という側面も成長させました。このような包括的なアプローチは、将来、学問的な熟達だけでなく、高い倫理観や社会性を必要とする科学者や医療専門家の卵たちに、責任感と広い世界観を持つことを促すことを目的としています。
今回のサマーキャンプは、OIST側の研究ユニット長、研究者や博士課程の学生がキャンプ参加者との絆を結ぶ機会となり、実り多い体験をもたらしました。クリスティーヌ・ラスカムユニットのファトヒ・ハサン研究員は、「キャンプ参加者のひとりが、『もっと長く滞在してユニットの方たちと一緒に研究したい』と言っていたのを聞いて、私たちはとても嬉しく思いました。この経験は、私にとっても重要でした。」とプログラムを振り返りました。
困難に負けず科学と進歩に全力を尽くす
OIST-KEIOインターナショナル・リサーチ・サマーキャンプ2023は、沖縄への台風直撃によって非常に困難な状況に直面しながらも、OIST側主催者たちと慶應義塾大学医学部の学生ら両者の献身と困難に負けない強さが際立つ、素晴らしいものになりました。今回のイベントは、学術研究の奥深さについての洞察を与えてくれただけでなく、適応力・問題解決力・チームワークなどといった、科学や医療の専門家を志す者たちにとって必要不可欠なスキルを授けてくれる機会となりました。
想定外の状況にもかかわらずサマーキャンプを成功させたことは、両連携機関の「学ぶこと」に対するコミットメントの強さを浮き彫りにするものでした―「知識を追求すること、科学を探究する精神は、何事にも勝る」という事に対する、輝かしい見本です。今回の経験は、間違いなく参加者たちの記憶に残り、学問的側面だけでなく人間的にも成長させてくれるものになるでしょう。